集落による集落のためのシンクタンク

みんなの集落研究所 平成29年度成果報告会を開催させて頂きました。

2月 4, 2019

集落・組織の課題解決 備中県民局管内備前県民局管内美作県民局管内 おしらせささえあうまもる

 

さる平成31年1月24日(木)16:00~18:00 岡山市勤労者福祉センターにて、小規模多機能自治推進NW会議 中国ブロック会議の後に休憩をはさみ、開催させていただきました。
遠くは山口県から、約30名の方にご参加いただきました。

この度の成果内容は、「地域運営組織の支援 ~住民アンケートの実施による主体づくり~」と、成果報告(2)「災害時における支援」です。
前半は、先のブロック会議の内容を受けて、
「どうやってお祭りだけをしていた地域から、課題解決に取り組む地域にしていくのか?」
「住民アンケートはどうやってすすめるのか?」
「アンケートを取った後、どうするのか?」
といった疑問にお答えする内容。後半は昨年7月の西日本豪雨災害を受けて、みんなの集落研究所も取り組んだ在宅避難者の把握調査やボランティアセンターへの職員の派遣、地域運営組織の防災体制づくりについてご報告しました。

 

当日の進行は執行役の梅谷が行いました。開会のご挨拶は執行役の佐藤より。その後代表執行役の石原より、みんなの集落研究所が設立から6年目を迎えたこと、昨年2月にふるさとづくり大賞(総務大臣賞)を受賞させて頂いたこと等をご報告致しました。

 

 

 

成果報告(1)「地域運営組織の支援 ~住民アンケートの実施による主体づくり~」

首席研究員の阿部、執行役の沖村、調査員の小野より、住民アンケート実施を地域運営組織の主体づくりに繋げる事例についてご報告を致しました。
まず、地域運営組織がなぜ必要か、小規模多機能自治推進に関しての当NPOの支援領域はどこか、行政・地域代表・個別地域それぞれの制度導入推進の考えといった、進め方の全体のフレームを確認しました。その後、本日お話する部分である、地域代表・個別地域において、アンケート実施を通じて地域運営組織の考え方への理解をどのように進めていったのか、浅口市と瀬戸内市の事例よりご報告致しました。

浅口市でのすすめかた

浅口市については沖村より、アンケート実施前、実施時、実施後にポイントだったことについて、実際に行政の方が地域の方へ説明する際に使われた資料も参考にしながらご報告致しました。
まず浅口市の概要をお伝えし、その後は、地域運営組織の総合計画への位置づけ。浅口市では、H27より制度導入に向け取り組みを進めています。進めるにあたっては、住民の方々に広く説明する前に、住民代表(コミュニティ推進委員会役員)との研修・協議の場を設け、住民への説明方法を検討しました。取り組み発表会の開催(チャレンジトーク)も行い、住民主体の課題解決の取り組みの必要性、行政との協働についても徐々に気運を高めていきました。

制度導入にあたっての住民説明の際には、浅口市の人口動態などの定量的なデータも示しながら、今後訪れる変化を共有するよう心掛けました。人口減等を受け数年後、10数年後は浅口市政もこれまでのようにはいかなくなり、行政だけでなく地域住民も課題を解決していく必要があること。身近な所でも、「行事型」→「事業型」の、暮らしを守る組織に変わっていく必要があること。 「何からやるか」→「現状把握しよう※アンケート実施」→「結果から課題を明確化※気付きを生むプロセスが課題解決を自分事にする」→「結果をクロス集計※課題解決の優先順位付け、絞り込み実施」→「組織の再編も検討」 といった流れでご報告しました。

瀬戸内市でのすすめかた

瀬戸内市の事例では小野より、地域の反応に応じて進め方を柔軟に変化させることの大切さをご報告しました
瀬戸内市の概要についてご紹介した後は、地域運営組織の制度導入検討の流れをH24からご紹介しました。制度導入検討に係る協議体制の紹介として、住民代表組織「協働のまちづくり推進委員会」での協議プロセス→ 広く市政の方々への制度紹介として公聴会を実施した結果、そこでの聴講者の声を受けて制度導入の進め方の再考(発議の根拠をまとめる(自治会長アンケート、世代別アンケート)→ 地域への説明を丁寧に進める(地域を考える会))を実施したこと。

後者で前者の結果を共有し、更に自分たちの地域を掘り下げて考える場として課題共有WSを市内20地域で実施したこと、ピックアップされた課題に基づき先進地から講師を招き勉強会実施、今年度は住民アンケートを実施したことなどをご紹介しました。

まとめ

その後両市の事例報告を踏まえ、阿部より津山市の上加茂住民自治協議会の主体形成支援の様子から、各町内会の話から上加茂地区全体を考える場へと展開した流れを、下記のようにご紹介しました。

①各町内会の動きの共有)→②課題と資源を確認→③体制の検討(意思決定と事業執行に分ける)→④アンケート実施(課題の解決に向け「誰」に「何」を具体的に実施するかの検討)→今年度中に報告会を実施予定

今後の上加茂自治協議会はアンケート結果を元に体制も整え、生活に必要な事業に取り組まれまれます。最後にみんけんが個別地域支援を進める上で意識している「しらべる→伝える→はなす→うごく」の流れをご紹介し、対象地域の状況に応じて「課題へ押し上げる」→「主体づくり」→「計画づくり」→「組織・基盤づくり」→「手法のアドバイス・マッチング」といった段階の支援を行うことをご紹介し、アンケートは地域づくりを頭で考えるきっかけであり、折に触れ、形を変えてどれだけビジョンを丁寧に共有するかが大切であることをお伝えして、第1部の報告を終えました。

 

 

 

成果報告(2)「災害時における支援」

阿部より、西日本豪雨災害発災後から災害支援ネットワーク岡山の立ち上げまでの動き、災害支援ネットワークの構成団体と取り組み内容、各地の災害ボランティアセンター、避難所で行われていたやり取りの様子、各団体との状況の共有・報告のマッチングの状況などを振り返りながらご報告しました。

 

災害時の医療看護活動における、医療的処方、社会的処方の重要性について

その後 コミュニティナースとして活動している十時より、昨年7月の西日本豪雨災害により甚大な被害を被った真備町地区に設けられた倉敷市災害ボランティアセンターに約2週間配属となった経験を踏まえ、災害時の医療看護活動における、医療的処方、社会的処方の重要性についてご報告しました。

まずは活動拠点となった倉敷市災害ボランティアセンターの特徴について、情報収集するニーズ班、ボランティアをマッチングしていくマッチング班、中心となった倉敷市社会福祉協議会などの体制についてご紹介しました。

 

ボランティア活動の多くが、浸水被害が大きく街の機能が消失していた真備地区で実施される中、比較的被害が少なかった地域から、ボランティアセンターの運営支援に多くの住民が駆けつけ、その数も自然発生的に増えていきました。災害ボランティアセンターでのコミュニティナースの活動としては、主に下記に取り組みました。

 

 

・救護活動のマネジメント医療職確保のために、地域の愛育委員等と連携し、担い手をコーディネート

・日々メンバーが変わる医療職への、住民ニーズ等情報提供や引き継ぎの実施。

・災害医療チームと連携し、活動内容共有と役割分担を実施し、スムースな救援活動につなげた。

・熱中症対策を予防的な観点で実施し、地元協力住民と協力し冷却物の配布等実施した。

・本人も自覚していない潜在的な不調を把握し、専門家へ繋いだ。医療ニーズだけでなく物資や環境といったところの連携を通じ住民の健康悪化因子の除去に務めた

・救護所でのニース聞き取り結果を、避難所運営を行っているNPO団体へ繋いだ

・災害ボラセン内、サテライトのトイレのについて、清掃に加え消毒方法の共有など地域の民生、愛育、栄養委員の方々と実施。

・避難所の配食は炭水化物が多く栄養の偏りが心配されていた。危惧した看護師が善意で3食調理していたが、負担が大きく継続が困難と判断し、外部の協力者(子ども食堂運営者)やボランティア希望者とのマッチングなどの実施。

・地域での関わりとして、ニーズ調査を行う過程でアロマカフェやハンドマッサージなど潜在的なニーズを拾うための工夫。

また、まとめとして以下をご報告しました、

◯災害医療に関しては、医療職だけではその効果は十分に発揮できず、地域の方も支援に参加できる環境を作ることが重要である。医療職が苦手なところを地域住民が担い、お互いが持つ力を活かせるような関係づくりが必要で、普段の関係性がいざというときの活動の広がりを支えていた。また被害が軽度な住民が災害ボラセンで活動することで、災害時に必要な役割・事柄の経験を重ねることが出来ており、それは非常に有意義なことだと感じる

◯医療専門家であることを全面に押し出して関わるよりは、支援物資関連の手伝いやアロマセラピーといった活動によるふれあいを織り交ぜながらのほうが、潜在的な健康ニーズの引出しに繋がった。

◯医療的な処方が出来るだけでは根本的解決には至らず、当事者に必要なつながりを紹介するといった社会的処方に必要な、地域が元々と持つ力や資源を知ることは、災害時においても必要なことである。必要なことを必要な人へ繋いでいくことがとても大切であることが大切である。

以上、住民の潜在的な力を引き出し、地域全体を健康にしていくコミュニティナースならではの視点も織り交ぜながらご報告を致しました。

地域運営組織×防災について

三村からは、地域運営組織で取り組む防災体制として、津山市城西地区「城西まちづくり協議会」防災防犯部会の活動内容と豪雨災害を受けての変化の話。また総社市昭和地区の住民による視察の話など、行政の枠を超えての独自に行われる、防災体制強化の取り組みなどについて、地域運営組織×防災の視点からお話させて頂きました。

まとめとして、地域運営組織が災害時の体制や対応を話し合うことにより、行政だけでは対応できない部分を主体的に動くことができること。地域の地形・人・強み・弱みを一番よく知る人の参加が重要であること。

防災のまちあるきワークショップや避難所運営訓練といった どの世代でも参加しやすい事業を実施することにより、 若い世代や子どもを巻き込むことができることをご報告いたしました。

 

まとめ

阿部からは状況把握と被災者ニーズ把握についてお話しました。

当NPOでは、在宅避難をしている被災者のニーズ把握を行う調査を実施しました。調査票を持ち、調査員が一軒一軒在宅避難者を訪問し、ニーズを聞き聞き取って回りました。訪問に際してはマニュアルを作成し、個人情報の取扱など注意を徹底しました。その調査の結果および調査過程において、課題に感じたものを今後に活かすため、下記を提案させて頂きました

①市外・県外の専門家によるセミナーや支援
→より身近に、より気軽に建築。住宅の専門家へ相談できる機会を提供できないか

②り災証明書の申請・発行に関する業務代行
→り災証明書の受付や発行を早く、正確に行うための体制や役割をどうやって実現するか

③要配慮者の把握と地元メディアと連携した情報発信
→地域の中で孤立している住民に情報を届ける方法はないか

④民間資源を活用したボランティアセンターの機能・体制
→民間の資源を最大限活用してボランティアセンターの機能を拡充できないか

⑤地域の営利事業者対象の補助・支援体制
→地域の事業者を守るための新しい支援策を考えられないか

⑥中長期期かつ専門的な相談・見守り体制・支援組織
→継続的かつ専門的な支援を実現するための体制をつくることができないか

⑦ニーズの変化と専門性に応じた訪問・聞き取り
→被災者の実態把握業務について

以上をもって、後半のご報告を終了しました。

 

最後に昨年10月からみんけんが管理運営をさせて頂いております、『ちいきいきいき相談所(津山市地域づくりサポートセンター)』のご紹介を行い、閉会とさせて頂きました。

 

ご協力いただいたアンケートからは

・80点。もう少し時間が長くても良かった

・100点。住民の方に行政の方と共にしっかり説明を、という言葉が印象に残った

・90点。アンケートを取るところに持っていく経過が後々重要になってくるということを改めて感じた

・100点。これから自分自身が取り組む(地域づくり)事にとても参考になった

・90点。日頃の取り組みが災害支援にもしっかり繋がったという言葉が印象に残った

といったご回答を頂きました。

今回の成果報告会は、「地域運営組織の支援~住民アンケートの実施による主体づくり~」と、「災害時における支援」という、内容・状況を絞った成果報告をさせていただきましたが、その分具体的に参考にして頂ける部分も多かったのではないかと思います。また、先に開催の「ブロック会議」と続けてご参加くださった方が多く、より地域運営組織について情報共有させて頂けたように思います。

しかし、そのようにじっくりご報告させていただいた分、会場の都合もあり、質疑応答の時間を設けることができなかったこと、お詫び申し上げます。

次回の成果報告会でも、地域づくりに取り組む皆さまが関心をお持ちのテーマに沿ってご報告をさせて頂く予定です。今後ともどうぞよろしくお願い致します。この度ご参加いただきました皆様、ありがとうございました!

 

★集落大図鑑7号「浅口市鴨方町みどりケ丘」もこの日初お披露目でした!

みどりケ丘の方々に、住民アンケートの実施を通じての移動支援へのお取り組みを取材させて頂きました。今回成果報告会で沖村より紹介させていただいた内容となります。ご購入希望の方はみんけんまでお問合せ下さい。